Experience in the president task of design studio
デザイン事務所を立ち上げて5年、社長業で経験したことメモ #01

最近、周囲で独立や起業する人が多く、少し上の先輩として相談されます。本当に最近多いように感じますが、こういう独立熱みたいなのって周期があるのかもしれないです。面白いです。
今後、TWOTONEからも独立する人がでてくるかもしれません。そういった独立、起業を考える人たちに、少しでも参考になる部分があるのではと思い、Zineでまとめてみようと思います。

言うまでもなく、お金はない

設立時、言うまでもなくお金はありません。僕の場合、前年に長男が産まれたり、併せて新居に移り住んだりして、出費の連続。そんなの中の起業でした。
設立後、環境整備などの出費は多いにも関わらず、入金はしばらくないですから、懐具合に気を揉みます。一般的に、デジタルにせよグラフィックにせよ広告系のデザイン事務所は、立ち上げから3ヶ月程度は入金がありません。
例えば、設立直後に、制作期間が1ヶ月以内の仕事を受注したとしても、納品後から支払いまでに2ヶ月程度は掛かります。合計で3ヶ月の間、入金がないままに走ることになります。
無計画に大きな案件を取ると、納品まで数ヶ月間要したり、請求額が大きいと手形で支払いなんて事態が発生し、入金タイミングがさらに伸びます。特に小さなデザイン事務所設立直後の、手形は痺れます。驚くべきことに、手形を満額現金化できるのは、請求から約半年間後です。(銀行に手数料を払えば、早めることも可能。手数料を払えば。)ずいぶんいろんな事が便利で高速になっていますが、なんなんでしょうね、手形の周りだけ、優雅な時間が流れ続けています。

新しい看板を掲げて鼻息が荒い状態ですが、ここはぐっと我慢して、短納期モノを受注していくのが吉です。
また、支払いは手形ではないか、請求から支払いまでの期間はどのくらいなのか、受注時によく確認しておきましょう。想定以上に入金のタイミングが遅い、なんて事態が起きたら、分割して一部でも先に請求、入金ができないか相談しましょう。「お金がなさそうで、カッコ悪い。」なんて気にしてはいけません。案外相談に乗ってくれる企業は多いです。各社、担当者、それぞれ懐事情は刻々と変わりますので、困ったときは助け合います。仮に、請求先に助けられることがあったら、ゆくゆく出てくる支払先からの相談も乗ってあげてください。

というように日々会社のキャッシュの具合も気をつけながら、一方で自分のキャッシュも気にしなければいけません。限り有る資本金から自分の給与なり役員報酬を出すか、資本金以外の自分の蓄えで食いつなぐしかありません。
勤めている時にはまったく考えが及ばなかった「自分の給与は、会社から見たらランニングコスト」という事実を実感します。どことなくもらって当たり前と思っていた給与が、尊いものに感じ、改めて前職、前々職の社長に感謝をする瞬間です。

起業を支援する公的サービスもある

僕らの会社は、資本金が潤沢ではないので、はじめから対策が必要でした。税理士の先生のアドバイスもあり(いい税理士の先生に一緒にいていただくのも、起業においてとても重要なことです。)、日本政策金融公庫、通称国金(こっきん)で融資してもらう計画をしていました。国金は、スタートアップ企業に対して、資本金の最大2倍まで、低金利で融資してもらえるという仕組みを持っています。例えば資本金が200万円であれば、最大400万円融資してもらえますので、600万円でスタートが切れるのです。資本金500万円なら最大1500万円でスタート、とても助かります。
融資には審査があります。先方としても産まれたてホヤホヤの会社にお金を貸すわけですから、きっちり審査されます。個人の貯蓄やローン含め、あらゆる角度で査定されますが、デザイナーの人々は、何よりもポートフォリオが大事でしょう。今までの制作実績や受賞歴などを、業界外の人が見ても分かりやすいようにまとめておきましょう。如何に自分のスキルが世の中に求められているか、分かりやすくプレゼンしましょう。

僕は使いませんでしたが、国金以外にも、区や市町村にスタートアップ企業を支援する仕組みがあるようです。都内でいうと港区、渋谷区は、手厚めだったと思います。金利や上限もまちまちですが、合うものを有効活用するといいでしょう。

余談ですが、こういった支援を受けた上で、しっかり返済していくと、会社に信用が付き、追々、地方銀行や都市銀行からの融資の可能性が見えてきます。業界外での信用、言わば社会的信用をコツコツあげること、当初から視野に入れたいところです。

お金だけでなく、環境を整える時間も惜しい

ウェブサーバやメールサーバを立ち上げる。やろうと思えばできなくもありませんが、そんな時間はありません。こういったインフラ周りは、サービスに頼ります。基幹となるメールやグループウェアは Google Apps for Business 一択です。メールサーバ領域がいっぱいになってしまっても、スタッフが増えても、すぐに増設できるので、ランニング時の時間節約にもなります。ファイルサーバを自社に立てるのも、一旦要検討です。仮に、ファイルサーバのHDDに不具合が起きた際に、全プロジェクトが止まります。大幅な時間ロスを招きます。バックアップの意味合いも含めて Dropbox for Business がオススメです。ちょっとした納品ファイルの上げ場所としても使えます。(取引先によっては、DropBoxがNGのケースのあるので要注意。)

プリンター、勤めていた時のA3対応のレーザーカラープリンターを想像しているのであれば、こちらも要確認。事務所がソーホー可能なマンション物件の場合、A3対応レーザープリンターの消費電力に耐えられません。マンション物件はアンペア数を上げられることもありますが、それでもA3対応レーザープリンターには足りなかったりします。悔しいですが、事務所物件を借りれるようになるまでは、省電力タイプのレーザープリンターで我慢です。A3出力がしたいときには、セブンイレブンのネットプリントで凌ぎます。

時間効率を考えると、不思議と一般的な生活リズムになっていく

デザイナーは、自分の経験値や、技術力、感性に対して対価をいただく職業ですが、もっと言うと経験値や、技術力、感性を発揮する「時間」を売っています。如何に付帯業務の時間を減らし、自分の本業に時間を費やし、金銭に変えていくかが肝です。(あくまでもビジネス上は。)
ところが、起業・独立は付帯業務を増やします。少人数でスタートした会社では、入金確認や支払処理も、代表が担当していたりするでしょう。(やっていました。)オンラインバンキングがあるとは言え、銀行窓口に行かないで済むところまでは完成していません。効率よく処理しなくてはいけません。
例えば、制作時間を確保するためには、朝9時前には銀行に並ぶ必要があるのです。昼12時に行っても、待ち時間で数倍時間が掛かります。デザイン業務の間に、銀行の時間を作るのも一苦労です。であれば、朝一にさっと行って終わらせてしまいます。夜型人間の僕が、開店前の銀行に並ぶとは想像もしていませんでしたが(勤めているときは、13時スタートが通常でした。)、効率よく付帯業務に携わる時間を減らして、制作時間を確保するためには必要なことなのです。
まさか、きちんと朝起きて、世の中が動き出す9時に活動を開始することと、自身のデザイナーとして価値を上げることが一致したことだとは・・。一般的に、普通にいいと言われていることは、自分にとっても良いことなんだと再認識し、学ぶべきものに普遍的な内容が多くなった、ある種のターニングポイントになった一件です。(最近はさらに進めて、早朝4時、5時スタートにチャレンジしています。)
(つづく)





社長業ネタ、書き始めたら、止まらない

まだ書きたいことはたくさんあるので、シリーズ化しようかと思います。
今回まとめはじめて気付きましたが、日々社長業的なことに時間、気力を使っていますし、概ね楽しんでやってますが、あまり話題に上がることはないなあと思いました。社長同士で集まってもそんなに話題にしない気がします。
もちろん専門家のアドバイスを参考にしたり、仲間と相談したり、前例を調べたりもしますが、どちらかというと我流の社長業。
これを読んでいただいた方の中には社長もいるかもしれません。別の解決策があるとか、異論をお持ちだとかあると思います。周りの社長の経験談も、是非聞いてみたいと思いました。